森の自然音は人々を癒すのか −サイバーフォレストを活用して−

こんにちは。東京大学大学院 新領域創成科学研究科 自然環境学専攻博士課程1年の
須古 泰志(すこ やすし)と申します。

現在、自然環境音が聞き手に与える心理的・生理的影響について研究しています。

目次

自己紹介

研究を始めたきっかけ:
学部時代の専攻(地球惑星科学)と趣味(ピアノ)

私がこの研究を始めたきっかけは、学部時代の専攻と趣味が関係しています。

学部生の頃、私は東京大学理学部の地球惑星環境学科というところで、地質学や鉱物学、環境化学、地理学などの基礎を学んでいました。

同時に、私は趣味でピアノを弾いていました。

そしてある日、私はこう思いました。

「地球環境に関わる学問と、音楽を組み合わせたらおもしろいかもしれない」

私が学部で学んでいたのは「理学」の一分野であり、物質を研究対象とするため、「人間が自然を見てどう感じるか」という主観的なテーマは扱いません。それとは逆に、音楽は人間の心や感性が大きく関わっています。

そこで私は、「自然環境」と「人は音を聞いてどう感じるか」という2つの事柄を結びつけておもしろいことをやってみよう、という発想に至り、大学院からは専攻を変えて「新領域創成科学研究科 自然環境学専攻」の修士課程に入りました

研究室の理念 (1):
自分でテーマを決めて試行錯誤する

次に、現在私が所属する研究室について簡単にご紹介させていただきます。
当研究室は、「自然環境景観学」という分野に属しており、主に人と環境の関わりについて研究が行われています。

通常の理系の研究室では、研究室全体で取り組んでいる大きなプロジェクトがあり、それに関連するかたちで先生が学生に研究テーマを与える場合が多いのではないかと思います。

しかし私たちの研究室では、学生たちが各々興味を持っているテーマについて、自主的に研究を行っています。これこそが当研究室のユニークな点です。

研究室の理念 (2):
体系化された学問を勉強するのは
学部までで充分!?

なおこれは、当研究室を率いる斎藤馨先生の次のような考えがもとになっています。

体系化された学問を勉強することは学部で充分でしょう。大学院では自らが課題を発見し、調べ、分析し、何らかの解決を見いだすことをやりましょう。だれしも環境問題について何らかの漠然とした問題意識は持っているはずなので、課題を発見することはそんなに難しくないはずです。

難しいのは課題から出口となる解決に向けて、何を目的に、どのような方法で進めていくのかを、自ら自立的に考え、実行していくことだと思います。試行錯誤全体にこそ、学ぶべきことがあり、社会に出た時に必要な経験なのです。」

自然環境景観学/斎藤馨研究室ホームページより引用

もちろん、「体系化された学問を勉強することは学部で充分」かどうかは分野によっても違うと思います。

たとえば素粒子物理学の研究のように、新しい発見をするために必要な知識の量がとても多く、かつ何千人もの研究者がチームを組んで研究を進めている分野では、学部を卒業したばかりの人が1人で新たな発見をするのはかなり難しいかもしれません。

しかし私たちが研究を行っている「自然環境景観学」の分野では、未開拓の領域がまだまだたくさんある上、何億円もするような高価な実験装置を使うこともありません。

そのため、修士・博士レベルの学生でも、自分の興味のあることを1人で掘り下げていくことによって、新たな発見ができる可能性があるのではないかと考えられます。

私自身も、斎藤先生のこの言葉に感銘を受け、大学院への入学を決意しました。

導入

自然音の癒し効果を研究する上で大事なこと

自然音が人間に与える影響に関する研究は、人間の感性と関わりが深いため、専門家以外の方でも、自分の経験や直感に照らし合わせることで内容をかんたんに想像できるのではないかと思われます。

しかし、かんたんに想像できるテーマであるがゆえに、研究の枠組みを設定するのが難しいともいえます。その理由は2つあります。

物理学や化学のような厳密な実験をするのは難しい

第一に、人によって感じ方が異なるからです。そのため、物理学や化学の実験のように条件を厳密にコントロールすることはできません。

また、たとえ同じ人であっても別の日に実験をすれば違う結果が出る可能性もあります。この点で、物理学や化学の実験のように「誰がいつどこで実験しても、手法が同じであれば必ず同じ結果が出る」とは言い切れない部分があります。

「どういう自然音をどうやって聞かせるか」を決めるのが難しい

第二に、「普遍的かつ最適な実験方法」を決めることがほぼ不可能だからです。人が自然音を聴いた時にどう感じるのかを調べた実験は過去にもたくさんあるのですが、

・どのような自然音を選ぶか
 (鳥の声か、水の音か、など)

・どれくらいの長さの自然音を流すか
 (10秒か、30秒か、2分か、それ以上か)

・自然音を流す時の音量はどのくらいか

・被験者の属性はどうするか
 (国籍、人種、性別、年齢、職業など)

といった条件についての統一的な基準は存在しません。というより、統一した基準を設けても意味がないと考えられます。なぜなら、実際に人が自然の中で自然音を聴く時の状況の組み合わせは無数に近いほどあるからです。

そのため、まず先に「いつ、どこで、どのような目的で、どのような人を対象に自然音を流すか」という具体的な場面を想定し、その状況を再現できるような実験設計をその都度考えることになります。

研究背景:世界的な注目を集めている自然音

近年の技術の発達により、大容量の音のデジタルファイルを保存したり、アーカイブに触れたり、リアルタイムで入手できるようになりました。この流れに伴い、自然のサウンドスケープ(音の風景)に着目した研究が盛んに行われています。

欧米での研究の多くは、生物多様性の評価のための新たな指標として自然のサウンドスケープを利用することを目的としている一方で、 日本では、原生自然のライブモニタリング を長期間にわたって続け、その過程で自然音を録音して保存する「サイバーフォレスト」(Cyberforest) というプロジェクトが、私たちの研究室によって行われています。

このプロジェクトは録音データの作成・保存自体を主目的の一つとしている点で、自然音を分析対象として捉えている欧米での主流の研究とは一線を画しており、他に類を見ないものとなっています。

森の中の音をライブ配信する
「サイバーフォレスト」プロジェクト

ここで、サイバーフォレストについて簡単に説明したいと思います。

本物の森の様子をリアルタイムで観られる

サイバーフォレストは、森林の日々の変化や鳥の鳴き声などを記録するロボットカメラを設置し、記録した動画や音声データをインターネットなどを利用して発信するシステムです。

東京大学サイバーフォレスト研究チームは、1995年から秩父演習林にロボットカメラを設置し、森林環境のモニタリングを続けています。

現在は、日本国内の8ヶ所にカメラとマイクが設置されており、現地の音と映像がライブ中継されています。

<カメラ・マイク設置場所>

  1. 東京大学北海道演習林(富良野市)
  2. ひょうたん島(岩手県大槌町)
  3. 船越大島(三陸復興国立公園)
  4. 生態圏舟田池(千葉県立中央博物館)
  5. 東京大学秩父演習林・鉄塔(埼玉県秩父市)
  6. 東京大学秩父演習林・矢竹(埼玉県秩父市)
  7. 信州大学志賀自然教育園(長野県山ノ内町(志賀高原))
  8. 東京大学富士癒しの森(山梨県山中湖村)

サイバーフォレストプロジェクトによって集められた森の動画や音声データは、ネット上でいつでも、誰でも、どこでも、無料でアクセスでき、自由に利用できます。

サイバーフォレストの環境教育での活用事例

また、これらのデータは環境教育の場でも活用されてきました。記録データを近県の小中学生に発信し遠隔授業を行なうなどの活動が行われています。

環境教育での活用事例については、詳しくはこちらのリンクからご覧いただけます。

近年は,岩手県大槌町の東京大学大気海洋研究所国際沿岸環境研究センターからのライブ音配信や、信州大学と共同で信州大学志賀自然教育園からのライブ音配信も行なっています。

本物の森の音を人が聞くとどういう反応が起こるか

しかし、当プロジェクトで集められた自然音の録音データを人間が聞いた際に、どのような影響を受けているのかを生理反応を手がかりにして調べる研究はまだ行われていませんでした。

当プロジェクトでは十数年分にもわたる膨大な録音データが蓄積されており、加えて自然音の「癒し効果」に関する研究も盛んになりつつあることから、この録音音源が人々に与えうる癒し効果について計測・評価することは潜在的に価値があると考えられます。

なぜなら、自然音の癒し効果に関する従来の研究では、都市部の公園や郊外で録音された音源や、人工的に合成された音源を用いているものがほとんどで、人里離れた原生的な自然の中で録音された音が用いられた例は少ないからです。

本論:研究内容

研究目的

さて、これまでは研究室全体のプロジェクトについて述べてきましたが、ここからは私の研究についてご説明します。

本研究では、前述のサイバーフォレストの音源も含め、原生的な自然の中で録音された音を聴いたときに人間が受ける心理的・生理的影響を計測・評価しました。

次の2つの疑問を明らかにするため、実験を行いました。

  • 自然音を聴くと、無音の状態で安静にした場合よりも癒されるのか?
  • もしそうだとしたら、どのような自然音がより効果的か?

本研究では、以下に示す2種類の実験を行いました。

実験A:学生と鳥類学者に自然音を聞かせ、反応の違いを調べる

この実験では、被験者に複数の自然音を聴いてもらい、その際の心理的・生理的影響を測定しました。外部からの騒音を遮断するため、防音設備のある部屋の中で実験を行いました。

なおこの実験は (A-1) と (A-2) から構成されており、前者は学生が対象、後者は鳥類学者が対象となっています。これは、自然音(特に鳥の鳴き声)に対する予備知識を被験者が持っているかどうかで、実験結果に違いが出るかを検証するためです。

用いた自然音:志賀高原とマレーシアの熱帯雨林(試聴できます!)

この実験では次の3つの自然音を使用し、それぞれ2分ずつ被験者の方に聴いていただきました。なお、自然音1と3は私が実際に現地で録音したもので、自然音2はサイバーフォレストのデータベースからダウンロードしたものです。それぞれリンク先で実際の音をお聴きいただけます。

(なお自然音2については、リンク先の音声の37分30秒から39分30秒にかけて断続的に自動車の走行音が含まれており、実験時はこの部分を用いました)

心理的・生理的反応の測定手法

まず、被験者に聞いてもらう自然音に、どの程度のストレス軽減効果(回復特性)があるかを「環境回復特性指標」(Percerved Restorativeness Scale) というアンケートで測定・評価しました。これは、聴いた音から想像できる環境に対する主観的な印象を、26項目の質問に11段階評価で回答することで評価します。

次に生理的反応として、「皮膚コンダクタンス水準」(Skin Conductance Level) という指標を測定しました。これは、被験者の指先に2つの電極を装着して電気的な反応を調べることで、その人の交感神経の活性化の度合い(どれだけその人が緊張したり、ストレスを感じているか)を評価することができます。

それらに加えて、自然音を流し終わった後で、被験者を対象にインタビュー調査も実施しました。これは、すでに項目が決まっている環境回復特性指標では調べられないような細かい被験者の印象を調べるためです。具体的な質問項目としては、次のようなものがあります。

  • 「今回聴いた音の中ではどれが好きか」
  • 「その理由は何か」
  • 「聴いた音から、どのような場面を想像したか」

これらの共通のインタビュー項目に加え、被験者ごとに気になった点について、自由な形式で感想を述べてもらいました。

実験B:国立がん研究センターとの共同研究 〜外科医の方々に癒しを提供する〜

この実験は、国立がん研究センター東病院との共同研究として実施されており、現在進行中です。外科医の方々を対象に、手術後に彼らが休憩をする際に自然音を聴いてもらうことで、日常的にストレスの高い環境下で仕事をされている外科医の方々に癒しを提供するための実証研究として、この実験は考案されました。

イメージ図:手術医のストレス緩和のための自然の音環境会議
(国立がん研究センター東病院および東京大学大学院新領域創成科学研究科による共同研究)

実験(A) とは異なり、この実験ではヘッドホンではなく、半閉鎖型の音響再生装置「サウンドコクーン」を用いて自然音を提示しています。これは、入口部分が空いていて、内部に最大2人まで入って座ることができる卵型の装置です。

これを使用している理由としては、外科医の方々はあくまで日常の業務の合間に自然音を聴くことになるので、聴いている最中に緊急の業務が入った場合でもすぐに現場に戻れるようにするためです。

生理的反応の測定手法

この実験では、心理的反応を計測するアンケート調査は行わず、生理的反応の測定とインタビュー調査のみを実施しています。

測定する生理的反応は、前に述べた皮膚コンダクタンス水準に加え、心拍数と血圧です。これらの反応を測定する装置は、朝に外科医が手術室に入る前に装着し、夕方に自然音の聴取とインタビュー調査が終わってから取り外します。そのため、手術中の反応も継続的に記録することができます。

新発見:どのような自然音が効果的だったか?

前に述べた実験Aから、次のようなことがわかりました。
なお実験Bは現在継続中のため、今年の6月以降に結果が出る見込みです。

発見その1:癒される自然音は
「なじみがあり、人工的な音を含まない」音

  • 日本国内の温帯の森で録音された、人工音を含まない自然音(自然音1)は、同地で録音された人工音を含む自然音(自然音2)よりも心理的・生理的にストレスを軽減する効果が高かった
  • マレーシアの熱帯雨林で録音された、人工音を含まない自然音(自然音3)は、心理的には自然音1よりも好まれなかったが、生理的には自然音1と同程度にストレスを軽減していた
  • 自然音再生前の無音状態における生理的なストレス軽減の度合いは、自然音1、3を聞いている時とほぼ変わらなかった
各音源を聴いている時の被験者の皮膚コンダクタンス水準の時間変化。横軸は聴き始めてからの時間を表す。なお縦軸は、聴き始めの10秒間の皮膚コンダクタンス水準の全被験者平均を1とした時の、10秒ごとの皮膚コンダクタンス水準の相対値である。縦軸の値が大きければ大きいほど、ストレスが高い状態であることを示す。被験者数は20名で、グラフは全被験者間の平均値±標準誤差を表す。筆者の修士論文を改変。
音源ごとの環境回復特性指標の得点。横軸の項目は、26項目の質問をもとに分類された尺度で、それぞれの音源の特性を示す。得点が高い音源ほど、聞き手のストレスをやわらげる効果が高いと考えられる。グラフは全被験者間の平均値±標準誤差を表す。筆者の修士論文を改変。

発見その2:
自然音にリアリティがないと鳥類学者は違和感を覚える!?

また、鳥類学者に同じ音を聞いてもらったところ、次のようなことがわかりました。

  • 人工音を含まない自然音(自然音1)を聞いた時の心理的な反応については、日本国内の鳥に関する事前知識を持っている鳥類学者の方が、そのような知識を持たない学生よりもストレス軽減の度合いが高かった
  • 一方で、鳥類学者にとっても学生にとっても全く馴染みがない自然音3については、両者の心理的反応に差異は見られなかった
  • インタビューの結果、鳥類学者のように鳥の鳴き声についての予備知識がある人にとっては、自分が今いる場所の季節とは異なる場所や季節の自然音を聞かされると、違和感を覚えることがあるということがわかった
  • 実際にインタビューの結果、次のようなコメントが鳥類学者から得られた。「自然音1、2(志賀高原)とは異なり、自然音3(熱帯雨林)は、馴染みがない音だったため、暑い場所なのか寒い場所なのかが皮膚感として分からなかった。これは、駅のホームで季節はずれな鳥の声を聞いた時(例えば、夏にしか鳴かない鳥の声を冬に聞いた時)に覚える不自然な感覚に似ている。これはまるで、真夏に湯豆腐を勧められたような、チグハグな感じである
  • インタビューの結果、鳥類学者は鳥の声を含む自然音を聴く際に、「鳥の声を漫然と聞き流す状態」と「鳥の種を判別するために集中して聴く状態」とを使い分けていることがわかった

新発見のまとめ

これらのことから、次のことが言えます。

  • 皮膚コンダクタンス水準の計測では、自然音中に含まれる人工音の有無が聞き手に与える生理的影響については評価できるが、人工音を含まない自然音と無音状態とを比較する際は十分な情報が得られない
  • 心理的には、馴染みのある自然音(自然音1)が好まれ、馴染みのない自然音(自然音3)が好まれないことがわかった。なお、自然音1と3の生理反応には差は見られなかった
  • 聴く音に含まれる要素についての事前知識や経験の有無により、聞き手の心理的な反応が異なる可能性がある
  • 従来の研究では自然音を聴く際の被験者の精神状態については言及がされていなかったが、事前にどのような指示を被験者に与えるか(音の内容を聞き分けるように要求するか、それとも漫然と聞き流すように伝えるか)によって、反応に差が出る可能性がある

終わりに:今後の研究の方向性

今後は、2つのテーマで研究を展開していくことを計画しています。
(1) 用いる音源の音響的な特性をより厳密にコントロールできるようにすること
と、
(2) 自然音の芸術的な表現方法を探ること
です。

フランスの研究所 “PRISM” との連携

まず、現在私は(1) に取り組むため、フランス南部の都市マルセイユにある研究室 PRISM (Perception, Representations, Image, Sound, Music) でインターンシップをしています(リンク先の同研究室のウェブサイトはフランス語版のみですが、参考のため掲載いたします)。

この研究室は現地のエクス・マルセイユ大学 (Aix-Marseille Université) およびフランス国立科学研究センター (Centre National de la Recherche Scientifique, 通称 “CNRS” ) と連携しており、音響工学や医学・生理学の研究者やアーティストたちが集まり、音に関する研究を分野を超えて行なっています。

また、この研究室は自然音を合成するためのソフトウェアを独自に開発しており、これを用いることで雨や風、波、火などの自然音を、それらの詳細な特徴を指定することで合成できます。

例えば、雨の音であれば、単位時間あたりの雨粒の数を指定することで、小雨から土砂降りの雨まで、音を自在に表現可能です。

私はこのソフトウェアを用いて、いくつかのパターンの自然音を合成し、それが聞き手に与える生理的影響について、皮膚コンダクタンス水準の変化を手掛かりにして調べる予定です。

アーティストとの共演:北海道の森の自然音をフランスの修道院跡地でライブ中継する(動画あり)

また、当研究所に所属するサウンド・アーティストとの共演も行なっています。

2019年5月4日に、マルセイユ市街地にある女子修道院 Couvent Levat の跡地で、世界中の自然の音をライブ中継するイベントが開催されました。この修道院跡地は現在、芸術活動のためのアトリエになっていて、80名ほどのアーティストたちが活動しています。

私たちサイバーフォレストチームもこのイベントに参加し、北海道の森の自然音をマルセイユの会場でライブ中継しました。同時に、その時鳴いている鳥の種名が会場に設置されたスクリーンに表示されるので、お客さんはそれをみながら森の音を楽しむことができます。

当日の様子を撮影したビデオ(音声あり)があるので、よろしければこちらをご覧下さい。

2019年5月4日にマルセイユで開催された、サイバーフォレストの自然音配信イベント

ちなみにこの鳥の種名を特定する作業は、日本にいる鳥類学者たちが同じライブ音を聞きながら鳥の鳴き声をリアルタイムで判別し、それを Lime Chat というソフトウェアを使ってチャット画面に入力します。

こうして入力された鳥の種名(日本語)が、英語とフランス語に翻訳されてマルセイユ会場のスクリーンに映し出されるという仕組みです。

今後もこのようなかたちで、アーティストとの共演をたくさん行なっていくことで、人々が感動する自然音の体験とはどのようなものかを探っていこうと考えています。

サイバーフォレストについてもっと知りたい方へ

最後になりますが、私たちの研究に興味を持ってくださった方に、サイバーフォレストのサイトと我々の研究室「東京大学大学院 自然環境景観学研究室」のサイトをご紹介します。

サイバーフォレストの研究が行われているのは世界でもここだけであり、教科書や参考書はまだ存在しません。また、この分野にはまだ未開拓の領域がたくさんあるので、皆さん一人ひとりの多様な切り口で研究を進めていくことができます。

サイバーフォレストに関して少しでもご興味のある方は、当研究室のウェブサイトをご覧いただくか、見学にいらしてください。お待ちしております。

また、今回ご紹介した私の研究活動(自然音を聞いた時の心理的・生理的反応の測定と評価)にご興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、私の個人ホームページもあわせてご覧ください。
なお、お問い合わせは yasushi.suko.ask(at)gmail.com にて受け付けております((at)を@に書き換えていただけますと幸いです)。

どうぞよろしくお願いいたします。

参考文献

1〜4がサイバーフォレストの関連サイトおよび参考文献、
5が筆者(須古)の研究紹介ホームページ、
6が筆者の修士論文、
7が研究室PRISM の公式ホームページ、
8〜19が自然音の癒し効果に関する記事となっております。
なお1、2、3および7は日本語なので、ぜひご覧ください。

  1. サイバーフォレストホームページ: http://landscape.nenv.k.u-tokyo.ac.jp/cyberforest/Welcome.html
  2. 自然環境景観学/斎藤馨研究室ホームページ:http://landscape.nenv.k.u-tokyo.ac.jp/Top.html
  3. TEDxUTokyo:サイバーフォレストに関する講演動画(講演者:斎藤馨)https://www.youtube.com/watch?v=UL0xL08QL10
  4. Saito, K., Nakamura, K., Ueta, M., Kurosawa, R., Fujiwara, A., Kobayashi, H. H., Nakayama, M., Toko, A. and Nagahama, K. (2015): Utilizing the Cyberforest live sound system with social media to remotely conduct woodland bird censuses in Central Japan. Ambio, 44 Suppl 4: 572-583
  5. 筆者(須古)の研究紹介ページ:http://www.yasushi-suko.com/wp/
  6. 須古泰志 (2019). 自然環境音が聞き手にもたらす心理的・生理的影響の総合的検討 東京大学大学院新領域創成科学研究科自然環境学専攻自然環境景観学分野 修士論文
  7. 研究室 PRISM ホームページ:http://kronland.fr
  8. Alvarsson, J. J., Wiens, S. and Nilsson., M. E. (2010): Stress Recovery during Exposure to Nature Sound and Environmental Noise. International Journal of Environmental Research and Public Health, 7, 1036-1046
  9. Annerstadt, M., Jönsson, P., Wallergard, M., Johansson, G., Karlson, B., Grahn, P., Hansen, A. M. and Wahrborg, P. (2013): Inducing physiological stress recovery with sounds of nature in a virtual reality forest – Results from a pilot study. Physiology & Behavior, 118: 240-250
  10. Axelsson, Ö., Nilsson, M. E. and Berglund, B. (2010): A principal components model of soundscape perception. The Journal of the Acoustical Society of America, Vol 128, No 5, 2836-2846
  11. Berto, R. (2005): Exposure to restorative environments helps restore attentional capacity. Journal of Environmental Psychology, 25 (2005) 249-259
  12. Horiuchi, M., Endo, J., Takayama, N., Murase, K., Nishiyama, N., Saito, H. and Fujiwara, A.(2014): Impact of Viewing vs. Not Viewing a Real Forest on Physiological and Psychological Responses in the Same Setting. International Journal of Environmental Research and Public Health, 11: 10883-10901
  13. Ma, H. and Shu, S. (2018) :  An Experimental Study: The Restorative Effect of Soundscape Elements in a Simulated Open-Plan Office. ACTA ACUSTICA UNITED WITH ACUSTICA, 104 : 106-115
  14. Medvedev, O., Shepherd, D. and Hautus, M. J.(2015). The restorative potential of soundscape: A physiological investigation. Applied Acoustics, 96: 20-26 
  15. Nilsson, M. E. and Berglund, B. (2006): Soundscape Quality in Suburban Green Areas and City Parks. ACTA ACUSTICA UNITED WITH ACUSTICA, 92: 903-911
  16. Staats, H. and Hartig, T. (2004): Alone or with a friend: A social context for psychological restoration and environmental preferences. Journal of Environmental Psychology, 24 (2004) 199-211
  17. Takayama, N., Saito, K., Fujiwara, A. and Tsutsui, S. (2017):Influence of Five-day Suburban Forest Stay on Stress Coping, Resilience, and Mood States. Journal of Environmental Information Science, Volume 2017 Issue 2 : 49-57
  18. Ulrich, R. S. (1984): View through a Window May Influence Recovery from Surgery. Vol 224, Issue 4647, 420-421
  19. Ulrich, R. S., Simons, R. F., Losito, B. D., Fiorito, E., Miles, M. A. and Zelson, M. (1991): Stress Recovery During Exposure to Natural and Urban Environments. Journal of Environmental Psychology, 11 : 201-230