精神疾患を生み出す遺伝子とその進化

東北大学大学院 生命科学研究科 博士後期課程2年の佐藤大気と申します。進化生物学の研究室に所属しており、精神疾患や個性の進化遺伝基盤を研究しています。

突然ですが、皆さんのまわりには「落ち込みやすい人」はいませんか?

同じように先生や上司に叱られたとして、深刻に落ち込んでしまい、時にはふさぎ込んでしまう人がいる一方で、次頑張ればいいや、とポジティブに考えられる人もいます。こうしたいわゆる「性格」や「個性」の違いはどこから生まれてくるのでしょうか?

この記事では、これまでに私が行ってきた研究を踏まえて、こうした個性や、あるいは精神疾患の進化的背景について考えたいと思います。

はじめに

あらゆる心の働きは遺伝の影響を受ける

皆さんの個性はどのような言葉で表されるでしょうか。

内向的、好奇心が強い、不安を感じやすい、楽観的、勇敢、共感能力が高い、向こう見ず、保守的、自尊心が高い…。性格を表す言葉はたくさんあります。あるいは言語的・空間的知能の高さや芸術的なセンスというのも個性の一部として表現できるでしょう。

現在では、これらのどれもが遺伝の影響を受けることが明らかとなっています。

これは、双子研究から明らかになりました。一卵性双生児(遺伝的に全く同じ)と二卵性双生児(遺伝的には兄弟姉妹と同程度の違いを持つ)を比較することで、ある形質が遺伝的な影響をどれほど受けるのか推定できるのです。

どちらのタイプの双子も環境から受ける影響の違いはほぼ同じですから、もし遺伝子が人の個性に強く影響するのであれば、一卵性双生児の方が二卵性双生児よりも似るはずです。そして、これまでに行われた多くの研究が、それを実証しています。

ただこれは、(血液型による性格診断のように)生まれた時点でその子の個性や性格が決定されている、ということを言っているわけではありません。

当然のことながら、生まれた場所の文化や受けた教育、ストレスといった環境の影響も強く受けますし、遺伝子の働きは非常に複雑で、その効果を予測するのは難しい面があります。

しかしながら、私たちの心の働きに遺伝子が関与しているのは疑いようのない事実であり、近年の研究では、数多くの個性に関わる遺伝子が発見されています。

精神疾患は個性と呼べるのか

一方で、こうした心の働きに関わる遺伝子がうまく働かなくなると、社会性の行動や認知機能に障害が生じることが知られています。一般に精神疾患と言われるものです。

代表的なものとして、気分が落ち込んだり、眠れない、食欲がないなどの症状が出るうつ病、幻覚や妄想、意欲の低下などに特徴付けられる統合失調症、社会性コミュニケーションの障害などを示す自閉症スペクトラム障害などが挙げられます。

精神疾患を引き起こす遺伝的要因の解明は、神経科学における中心的な課題であり、これまでに多くの研究がなされてきました。その中で近年、性格と精神疾患の遺伝的要因には大きな重なりがあるということが明らかになってきました。

つまり、遺伝学的な意味においては、精神疾患も個性の一部と捉えることができるのです。「用心深さ」は性格として捉えられますが、それは「不安傾向の強さ」でもあり、あるいは「うつ病のなりやすさ」なのかもしれません。

個性や精神疾患の進化的背景

すると、こうした心の働きにおける個々人の違いはなぜ存在するのでしょうか

環境要因はここでは置いておくとして、遺伝要因だけに着目しても、これには大きく分けて2つの答え方ができます。

1つは、ある特定の遺伝子の働きが人によって異なるから、というもの。すなわちメカニズムとしての至近的な答え方です。

もう1つは、そうした個々人の遺伝子の違いが生み出されるように進化したから、というもので、こちらはより究極的な説明になります。

特に精神疾患に関しては、自殺率の高さや婚姻率の低さに代表されるように、患者の適応度(生存や繁殖)に大きな影響を与えます。進化の視点から考えると、そのような症状を引き起こす遺伝子は取り除かれるはずですが、実際にはその発症率は非常に高く、進化的なパラドクス(矛盾)と考えられています。

こうした背景から、なぜ私たちの心の働きに影響する遺伝子に多様性が存在するのか、について進化的な視点から研究することは、私たちの個性や精神疾患の根本的な理解に役立つと考えられます。

その上で、分子生物学や神経科学の手法を用いて、個々の遺伝子の働きについて理解が深まれば、そうした遺伝的多様性の機能的な意義を明らかにできるでしょう。さらには、個々人に合わせた適切な心のケアや治療にもつながるかもしれません。

研究背景

遺伝子と私たちの関係

遺伝子とは何か

以降の話をスムーズに理解してもらうため、はじめに遺伝子(gene)とは何か、についておさらいします。

そもそも遺伝とは、生殖を通して親から子へと形質が受け継がれることです。皆さんの眼や鼻、耳の形などは親(あるいはそのまた親)から受け継いだものでしょう。

しかし形質そのものがコピーアンドペーストされるわけではありません。受け継がれるのはあくまでもその設計図であり、この設計図はA、T、G、Cという4種類の文字(DNA)によって書かれています

しかし、この設計図には、その働きがよく分からない部分がたくさん含まれています。むしろ、そのような部分が大半と言えるでしょう。

一方で、ここは目の色を決めているみたいだ、とか、ここは暑がりかどうかを決めているみたいだ、といった機能が分かった部分があります。あるいは、機能は分からないが、ここはまとまって働いているだろう、という部分もあります。

こうしたひとまとまりの領域を遺伝子と呼び、それらの多くはDNAの設計図を20種類のアミノ酸を使った設計図に書き換え、さらにタンパク質を作ります。

ヒトにはそうした遺伝子が約2万個あると言われていますが、それら一つ一つが、それぞれの持ち場でしっかりと働くことによって、タンパク質が作られ、細胞が維持され、組織が構成され、生命体として機能するのです。

ひとりひとり、異なる遺伝子を持つ

2003年には、ヒトの遺伝情報の総体であるゲノム(genome, “遺伝子” gene + “すべて”を示す接尾辞 ome)の解読が宣言され、私たちの体は約30億個のDNA塩基対で設計されていることが明らかになりました。

さらに、多くの人のゲノム配列を解読していくと、約0.1%ほど、個人間でゲノムの違いが存在することが分かりました。つまり、DNA配列を見ていくと、1000に1つの割合で、ある人はA、ある人はGだったりと、異なるわけです。こうした個人間の遺伝的な違いを遺伝的変異(genetic variation)と言います。

現在では、本当にありとあらゆる遺伝的変異と形質との関係が調べられており、私たちの病気や身体的特徴、あるいは個性がどのような遺伝的変異によって引き起こされるか、さらにその背後にある生物学的なメカニズムについて、日々膨大な研究が行われ、その成果はデータベースに蓄積されています。

突然変異が遺伝子の進化につながる

遺伝的変異はいわゆる突然変異(mutation)によって確率的に生じます。細胞が分裂する際のDNAの複製ミスであったり、化学物質や放射線などによるDNAの損傷が主な原因です。

体細胞で起きた突然変異は、その細胞にしか影響を与えませんが、これが生殖細胞(精子や卵)で起これば、次世代の設計図が書き換えられる可能性があります。これが、先ほど述べた個人間の遺伝的変異として認識されるのです。

突然変異は、細胞のガン化や、機能不全を引き起こすこともあるので、個体レベルではあまり有益に思えません。一方で、集団レベルで見れば、変異によって新たな機能を持った遺伝子が生まれるため、進化の原動力とも言えます。

進化的な視点で考えると、遺伝子の新たな機能が、それを持つ個体の繁殖や生存に有利に働いた場合は、その遺伝的変異を持つ子孫が増え、集団内の多くの個体に共有されていくでしょう。

一方、個体にとって不利に働く遺伝的変異は、頻度を増すことなく、なくなっていきます。有利にも不利にも働かない遺伝的変異は、ただランダムに集団中で頻度を増したり減らしたりします。これが遺伝子レベルで見た進化です。

精神疾患に関わる遺伝子はどう進化するか

精神疾患は人類進化の副産物?

さて、心の働きを障害する精神疾患のメカニズムを理解することは、すなわち、私たちの脳や心がどう働いているかの理解につながります。そのため、精神疾患を引き起こす遺伝的変異については非常に多くの研究が行われてきました。

一方で、上述のように進化の視点から見ると、精神疾患を引き起こすような遺伝的変異は、個体の繁殖や生存に不利に働くので、集団中で頻度を増すことなく、いずれなくなるように思えます。

この点について、古くから提唱されている仮説の一つが、精神疾患は人類進化の副産物ではないか、というものです。

例えば、統合失調症と創造的な考え方や、自閉症スペクトラム障害と知能の高さの関連などが以前から指摘されていました。こうした背景から、人類の進化過程において、高度な社会性や知能、創造的な思考などが発達していった結果、その副産物として精神疾患が生まれたのではないか、という仮説があります。

進化の歴史を遺伝子に探る

カナダ・サイモンフレーザー大学のクレスピらは、中でも統合失調症に着目して、この仮説を検証しました。

ヒトや他の哺乳類の遺伝子配列を用いて、統合失調症の関連遺伝子に生じた進化的変化を観察し、精神疾患の進化的背景についての先駆的な論文を2007年に発表したのです。

彼らは、統合失調症の関連遺伝子が人類の進化に大きな貢献をしているのであれば、そうした遺伝子には人類の系統で加速的に進化した痕跡が見られるだろう、と考えました。

そこで、それまでに発表された遺伝学的な研究を調べ上げ、統合失調症の発症に関与すると思われる76個の候補遺伝子を抽出しました。その上で、生物種間における遺伝子配列の変化から、人類の進化過程で特に大きく変化した(すなわち加速的に進化した)遺伝子の検出を試みたのです。

結果は、彼らの予想通り、他の遺伝子に比べて、統合失調症の関連遺伝子には、人類の進化過程で加速的に進化したものが多いというものでした。

これは、脳の機能に関わる遺伝子に生じたDNA配列の変化により、人類の高度な認知機能が進化し、さらにその副産物として(新たな遺伝的変異が生じて)統合失調症が生じた、という従来の仮説に沿う結果であると考察されています。

筆者の研究内容

精神疾患に関わる遺伝的変異と個性の進化

大規模データから遺伝子の進化過程を解明する

上記の研究は当時としては非常に先駆的で、精神疾患の進化について議論する上では必ずといって良いほど引用される研究です。

しかしながら、様々な生物のゲノム配列が高精度に解読され、また、精神疾患の分子メカニズムが明らかになっていくにつれて、関連遺伝子数もどんどん増加している現状から見ると、当時の解析精度には疑問が残ります。

そこで私たちは、解析対象とする疾患数・遺伝子数・生物種数を増やし、また、遺伝子と精神疾患との関連性の確かさや、遺伝子配列の精度にも気を配り、より高精度で網羅的な進化解析を行い、2018年、国際学術誌に論文として発表しました。

興味深い遺伝子を発見

その結果、全体として、精神疾患に関連する遺伝子は人類系統で加速的に進化したものが少ないことが分かりました。上記の論文とは真逆の結果が出ましたが、これはある意味予想通りでした。

なぜならば、精神疾患の発症に関わる遺伝子は脳の重要な機能を担っているものが多く、いくらヒトが大きな脳や高度な認知機能を発達・進化させたといっても、そんなに多くの遺伝子がガラッと変化することはなかなか起こらないと思われるからです。

一方で、ごく少数の遺伝子にはヒト系統における加速進化の痕跡が見られました。これらの遺伝子における進化の痕跡は、今回私たちが新たに発見したものであり、人類進化における役割について今後さらなる検証が必要と思われます。

そのうちの一つに、神経伝達において重要な役割を果たしているVMAT1(小胞モノアミントランスポーター1)という遺伝子がありました。

VMAT1遺伝子の働きと遺伝的変異

私たちの脳には、ニューロンとも呼ばれる神経細胞が網の目のように張り巡らされており、あらゆる情報伝達・処理はこの神経細胞が主体となって行われます。

神経細胞を伝った電気的なシグナルは、細胞間の連結部分(シナプス)で化学的なシグナルに変換されます。すなわち、ここで小胞に包まれた化学物質(神経伝達物質)が放出され、さらに次の神経細胞によって受容されることによって、スムーズな情報伝達および制御がなされるのです。

VMAT1遺伝子は、この神経伝達物質を分泌小胞に蓄える働きを担っており、私たちの脳の情報処理になくてはならない存在です。

私たちが発見したことは、このVMAT1遺伝子の130番目と136番目のアミノ酸がヒト特有に変化していたということです。

特に、136番目のアミノ酸は、ヒト以外の哺乳類はみなアスパラギン(Asn)というタイプであったのに対して、ヒトには、スレオニン(Thr)とイソロイシン(Ile)という二つのタイプがありました。すなわち、ヒト特異的な遺伝的変異だったのです。

さらに、先行研究を調べてみると、このアミノ酸はタンパク質の機能制御に関わる部位にあり、実際にこの遺伝的変異について分子生物学的な実験を行なった研究では、Thr型は神経伝達物質を取り込む働きが弱いことを示していました。

また、主にヨーロッパ人を対象に行われた疫学的研究では、Thr型の人と不安やうつ傾向、双極性障害など精神疾患や精神的個性との関連性が指摘されていました。

このように遺伝子配列の進化とタンパク質としての機能変化、そして精神的個性との関係が明らかになっている例は珍しく、人類の進化と精神疾患や個性との関係性を考える上で、VMAT1遺伝子は非常に興味深いモデルになりうると考えられます。

そこで私たちは、Thr型とIle型はどちらが先に進化したのか、またこの遺伝的変異はどのように集団中に維持されているのか、についてさらなる解析を行いました。

ゲノムが語る人類の個性史

人類進化の初期段階では強い不安傾向が進化した?

解析には、データベースに存在する、世界各地の26集団、約2500人分の現代人ゲノムデータを主に使用しました。インターネット上のデータベースを照合することで、Thr型やIle型を持つ人がどの地域にどれだけいるのか、瞬時に分かるのです。

また、ネアンデルタール人とデニソワ人という、近年解読された古人類2種のゲノムデータを使用しました。化石から採取されたDNAは非常に貴重なデータであり、遺伝子がどのように進化したのかを示すなによりの証拠となります。

まず現代人ゲノムデータを用いて、全世界的なVMAT1遺伝子の頻度を調べた結果、アフリカの集団ではThr型の頻度が非常に高い(~約95%)ことが分かりました(図1)。

図1. 世界各地の集団におけるVMAT1遺伝子変異の頻度(Sato & Kawata, 2018を一部改変)

一方で、ヨーロッパやアジアの集団では依然としてThr型の方が頻度が高いものの、Ile型の頻度も約20–30%と、比較的高くなっていることが判明しました。

現生人類はアフリカで起源し、世界各地に拡がっていったことを考えると、アフリカで非常に頻度が高いThr型が祖先的な遺伝子型であるように思えます。

さらに、古人類のゲノムデータを調べたところ、どちらの種もThr型であることが分かりました。サンプル数が少ないため、確定的ではありませんが、Thr型が既に古人類の段階(遅くとも約50万年前)に生じていたと考えられます。

さらに、この遺伝的変異がどのように進化したのか、シミュレーションを行ったところ、やはりThr型が祖先的であり、Ile型は約10万年前に生じたということが推測されました。

これは人類がアフリカ大陸からユーラシア大陸へと渡った”出アフリカ”のタイミングとも重なります。Ile型が人類の出アフリカと前後して出現したと考えると、アフリカとそれ以外の集団での遺伝子頻度の違いも理解できます。

不安を強める変異と弱める変異、両者が積極的に維持されている

では後から出現したIle型はなぜ、ヨーロッパやアジアで頻度を増すことができたのでしょうか。上述の先行研究をふまえると、精神疾患のリスクが低いIle型の適応度が高く、多くの子孫を残したのでしょうか。これについても、ゲノムデータを用いて検証したところ、興味深い事実が分かりました。

VMAT1遺伝子周辺の遺伝的多様性(個人間の遺伝的な違いの多さ)を検証したところ、特に上記の遺伝的変異の周辺で、遺伝的多様性が非常に高くなっていることが分かりました。

これは意外なことでした。Ile型が有利であるならば、Ile型を持った個体のゲノム配列が集団中に広がり、遺伝的多様性は下がるはずだからです。

一方で、集団内での遺伝的多様性が非常に高いということは、Thr型とIle型のどちらか一方に自然選択が働いているわけではなく、両者が積極的に維持されるような自然選択が働いていることを示唆します。

これについてもシミュレーションを行いましたが、やはり一方向的にIle型が有利なモデルでは、遺伝的多様性は高まらないことが判明しました。

Thr型がうつや不安傾向などと関連していることを考えると、人類進化の初期段階では不安傾向が強い個体が選択されていったのかもしれません

それに対し、人類の出アフリカと前後して生じたIle型は、精神疾患にかかるリスクが低く、一見、適応的にも見えますが、実際には両型が進化的に積極的に維持されている可能性があります(図2)。

図2. VMAT1遺伝子変異の進化と、私たちの精神に与える影響

本研究の意義と今後の展望

本研究は、ヒトの精神的特性がその進化過程で強い自然選択を受けてきたことを示すとともに、私たちの心の多様性に関わる遺伝的変異が自然選択によって積極的に維持されていることを初めて実証したものです。

これは、ヒトの精神的個性の違いや、うつ症状・不安症をはじめとする精神疾患の進化学的意義を明らかにするものであり、精神疾患を含めた多様な個性の捉え方や社会的意義を考える上で、大きな示唆を提示するものと思われます。

一方で、いまだに解決されていない問題がいくつかあります。

一つは、チンパンジーとの共通祖先からヒトの進化に至る段階で、VMAT1遺伝子の進化がどのような生理・神経・行動の変化を引き起こしたかです。

これを知るためには、遺伝子配列の解析だけではなく、培養細胞や実験動物を用いて実験を行う必要があります。これについては、現在、分子生物学や神経科学を専門とする研究者と共同研究を行っているところです。

もう一つは、現代人集団において、なぜThr型とIle型の両者が積極的に維持されるのか、その進化メカニズムの解明です。進化生物学においては、遺伝的変異を集団中に積極的に維持するメカニズムの解明は重要な研究テーマであり、様々な理論が提唱されています。

こちらについては、大規模な医療データを用いてVMAT1遺伝子型と形質との関連について調べることでそのヒントが見えるのではないかと考え、研究を進めているところです。

こうした研究を通して、どのように私たちの精神的個性は進化してきたのか、集団内にその多様性が存在するのはなぜか、といった問いに対する答えを出したいと考えています。

おわりに

以上、長くなりましたが、私の研究を紹介させていただきました。

興味を持たれた方は、関連の書籍等を読まれるといいと思います。「心」「遺伝子」「進化」などのキーワードで検索すると、山ほど出てくるでしょう。

私はこれまでヒトの精神疾患や個性の進化をテーマに研究を行ってきましたが、その過程で強く感じたことは、学問には理系も文系も関係なく、勉強は興味を持ってからで遅くないということです。

博士や研究者というと、博学で何でも知っている人のように思うかもしれませんが、専門外のことについてはみんな素人で、だからこそ勉強が欠かせません。分からないことは恥ずかしいことでも何でもなく、分かろうとする姿勢がある限り、物事は少しずつでも前に進みます。

私たちヒトは、他の霊長類に比べて好奇心が強いという研究結果もあります。進路に迷った時には、自分の興味や欲求に素直に従って、一歩踏み出してみるのもありかなと思います。私たちは太古の昔からそうやって生きてきたはずです。

最後までお読みいただき、どうもありがとうございました。

参考文献等

「心は遺伝する」とどうして言えるのか: ふたご研究のロジックとその先へ

生き物をめぐる4つの「なぜ」

進化心理学を学びたいあなたへ: パイオニアからのメッセージ

Steel Z. et al., The global prevalence of common mental disorders: A systematic review and meta-analysis 1980-2013. International Journal of Epidemiology 2014, 43(2): 476–493

Crespi B. et al., Adaptive evolution of genes underlying schizophrenia. Proceedings of Royal Society of London B 2007, 274(1627): 2801–2810

Sato D.X. & Kawata M., Positive and balancing selection on SLC18A1 gene associated with psychiatric disorders and human-unique personality traits. Evolution Letters 2018, 2: 499-510